未来を想うステージへ、ようこそ。


大学というところは、講義を受けて単位さえ取れば卒業させてくれます。ただ、自分が「もっと知りたい」と思わなければ、4年なり、2年なりの時間を、それだけのために使ってしまうことにもなりかねません。そこでぼんやりとした夢ではなく、自分は「将来、こうなりたい」「あんな仕事がしたい」「こんなモノを創造したい」といった、わりとリアルなイメージを自分の中に見つけることができれば、きっとより深く学べ、そしてステキな出逢いがあり、みなさんを一気に成長させてくれることでしょう。未来を想うステージへ、ようこそ。近い未来の社会で活躍するエンジニアとなるためのスタートラインに立ったみなさんに、先輩エンジニアから期待を込めて、私の経験を言葉にして贈ります。
好きな分野で探し、学べる。
それは大きな幸運なのです。


ところで、この工学部に対して、理学部という部門があります。両者の違いは何か?簡単にいえば、工学部は、今ある技術をもとにして、さらに高度な技術へと発展させる研究、あるいはまったく新しい技術の基礎を開発する分野です。いっぽう理学部は、物理や数学の考え方で、自然の仕組みを解明する学問。形而上学です。工学部、理学部いずれにも大きな枠で、徳島大学工学部の場合であれば、さらに7つの学科に細分化され、その中でまた、それぞれの研究者が独自の分野を切りひらいているという、非常に裾野の広い世界なのです。たとえばこれから大学に通うみなさんは、工学部○○学科まで決めている、という状態であり、今後、その先は自分の力で見つけ出さなければならないということです。つまり自由に選ぶことができるということでもあります。それは、自分の好きなことを学び、研究できる大きな幸運。大いに喜び、早く自分の研究テーマを見つけてほしいと思います。
自分の中に到達したい目標ができると、
キャンパスを歩くスピードが変わります。


私は、会社での立場上、海外のキャンパスや多くの学生たちに接する機会も少なくありません。そこで感じるのは、彼らの歩くスピードの速さです。そのことを聞いてみると、目標すなわち「やりたいことがあるから」と答え、足早に立ち去っていきます。つまり研究室に向かって歩いている時間すらもったいないと考えているのです。そんな考え方ができるのは、将来の目標がわりとハッキリ見えているからかもしれませんし、何より、自分の好きなことが、目標になっているのだろうし、また、達成する道のりも面白がっているのでしょう。みなさんも、楽しい場所へ行くのに、漫然と歩いてはいなかったと思います。「やりたいことを、早く見つけてほしい」これが、第3話で贈る私からのエールです。キャンパスの中を、目標に向かって一直線に歩いているそんな、未来のエンジニアたちのスガタに期待します。
自分は将来何がしたいのか。
明確な目標を早く見つけよう!


「自分は何が好きなのか」「どんなものに興味を持っているのか」「研究したい、実現したいテーマは何か」といったことにきちんと向き合うことで、「4年後の自分はどんな志望を持っているか」「未来のエンジニアとして、どんな分野で活躍できるか」「どんな仕事をしたいのか」などが見えてきます。その結果、「4年なり2年の大学生活で、やらなければならないこと」が、はっきりとします。そしてこれからの1日、1週間、1ヶ月、1年、そして4年間のスケジュールを具体的に組み立てることができるのです。貴重で、大切な大学での時間です。未来のエンジニアのみなさん、まずは、やりたいことを早く見つけてください。これが先輩エンジニアである私からの4つ目のエールです。
自分のテーマを見つけたら、
とにかく『足る』までやろう!


しかし、私がいう『足る』とは、徳島弁であって、ニュアンスが少々違います。『足る』とは、『飽きるまでやる』(尽きるまで探求する)ことを指します。たとえば、子どものころカブトムシを飼ったことがあると思いますが、最初はただカゴで飼うだけ、そして数を増やしたいと考えるかもしれません。ここまでは、一般的な『足る』、物欲といっていいかもしれません。ここからが、私のいう徳島弁の『足る』。そのカブトムシに深い興味を持つと、エサは何がいいのか、どんな環境で暮らしているのか、雌雄の違い、成長の過程、卵から幼虫、さなぎが育つ土の状態、土づくりなど、知りたいことが無限に出てくるのです。これは精神的な欲求、つまり知識欲です。「これくらいで、まぁええわ。十分じゃ」と感じたら、決して、放り出さないこと。その先にもっと面白い研究テーマが待っています。足りた後に、足るまでやる。自分の好きなこと(テーマ)を見つけたら、とことん研究してほしい──。見えそうで見えなかったものが、きっと見えてくるから。これが、私からの5つ目のエールです。
ちなみに(株)松浦機械製作所の今のテーマは
無線LAN移動中継システムの普及です。


──モノづくりの技術はある。
──完成すれば、きっとみんなの役に立つはずだ。
──だったら全社を挙げて取り組んでみよう。
こうした経過から、未来を思い描き、そして「今」を積み重ねてきた結果、少しずつですが、実績を蓄えることができたのです。まだまだ、(株)松浦機械製作所は、このテーマに対して『足る』までには至っていません。研究・開発、そして今後は普及に精一杯取り組んでいきます。未来のエンジニアのみなさんも、テーマ・目標さえつかむことができれば、具体的なイメージが生まれ、やるべきことが見えてきます。それこそが『未来を想うチカラ』となり、きっと、みなさんの夢を実現させるパワーとなるに違いありません。 ガンバレッ!
最新の技術を使いこなそう!
そして『より便利』を考えよう。


無線LAN移動中系システムは、最新の技術、機械を組み合わせ、アセンブリすることで、より便利で、斬新なシステムとして誕生したわけなのです。もちろん、技術はどんどん進化していきます。だから休まず、今ある最新技術を理解する、つまり使いこなすこと。より効率的な機械、いっそう便利なシステムの開発につながるアイデアは、最新技術に触れる中から、生まれることも少なくないのです。若いみなさんにとっては当たり前かもしれませんが、携帯電話、ノートパソコン、デジタルカメラ、GPSなど、私は、常に最新の機器のそばにいるようにしています。自分のアイデアを広げてくれるモノ、そして『未来を想うチカラ』を手に入れるため、投資と時間を惜しまない──。そういうことも必要だと、私は思うのです。
「好き!」から始まる技術進歩


考えるまでもありません。そこに需要があったからです。需要とは何かといえば、「好き!」ということです。たとえば、女性の裸を見たいという欲求(男性に向けて話します)が、よりスピードのあるCPUやグラフィックカードを求めさせ、さらに回線もADSL、光へと進化させたのです。裸を例にして、申し訳なかったですが、音楽やゲーム、またケータイで、ブログやホームページを作ってみたいといった欲求が技術進歩に猛烈な勢いを与えたと確信しています。
さてここで、裸ばかり追っていたのでは、みなさんの進化はありません(またまた申し訳ない)。あくまで、それは「好き!」という直情的なエネルギーであって、情報を収集する技術向上のきっかけに過ぎないのです。そこで次にやるべきことは、ウエブから、メディアから、交友関係の中から得られる膨大な情報を、自分がなりたい未来のスガタに照らし、整理整頓すること。「未来を想うチカラ」を発動させるために、欠かすことのできない訓練だと知ってください。ところで、整理整頓といいましたが、整理とはどういう意味でしょう。整頓とはどう違うのでしょうか。次回は、言葉の意味を知ることの大切さ、そして根拠の重要性について、お話しします。
決断するために欠かせないもの、
それが根拠です。


情報も同じです。ある目的地に着くために道路情報を集めるとしましょう。そのとき、一刻も早く到着したいといったケースでは、最短距離で、高速道路などの利用料金がかかってもこれを選択することでしょう。いっぽう急がない旅であれば、観光地やグルメ情報なども収集する必要があります。状況にあわせ、最も適切な情報を選り分けること、これが整理なのです。
さて、整頓とはどんな意味でしょう。これは順序よく並べること。決まりに従ってそろえることです。機械の製作工場では、道具類を所定の位置に常に置くことで、仕事がスムーズに進みます。置き方も、使用頻度の高いものから取りやすい場所を考えています。また、たとえば、みなさんの前で私が講演を行うとします。あれも言いたい、これも伝えたい、とたくさんの小ネタが頭に浮かびます。そこで、テーマ(決まり)にそって最低限必要な小ネタを拾い出し(ここは整理です)、より面白く話を組み立てるといったところでしょうか。
整理・整頓の意味も重要ですが、ここで伝えたかったのは、これら普通に使う言葉であっても、あらためて意味を確認することが大切だということです。「その資料を整理しておいてね」と言われて、縦横をそろえて、きれいに並べるだけではダメなのです。整理と聞いたのですから、資料をカテゴリーで分けるとか、不必要な資料が混ざっていないだろうかと、調べることが求められているのです。ここまで意味を知ることの大切さについて、お話ししてきました。さて、次は連絡と報告。どう違うか分かりますか?次回も引き続き、根拠をテーマにエールを贈ります。
連絡することで、決断の根拠を得る。
報告によって、正確な評価をもらう。


まず連絡です。辞書によれば、「つながり」「情報をなどを知らせること」などとあります。いっぽうの報告は、どうでしょうか。これまた辞書によれば、「研究や調査、あるいは任務の結果を知らせる」とあります。どう違うのか。もう分かったかもしれませんが、連絡は、現在進行形であり、今の状況を知らせることで、相手の意見や判断をもらうための行動です。そして報告は、結果を知らせるものです。レポートなどを提出し、自らが取り組んできたことの成果や実績を評価してもらうための材料づくりなのです。連絡そして報告は、研究や開発、機械づくりといった一連の流れの中にあるということなのです。こうした連絡・報告の技術を身につけることは、社会人となるための基本・基礎であると思います。
連絡することで、仲間や上司の意見・判断をもらい、また自分の決断に、より正しい方向を見つけることができます。私の経験から分かるのですが、確信し、決断しなければ、実行するためのチカラが湧いてこないのです。だから、多くは失敗につながります。そして、報告することで、他の人の評価をもらうことが、実力をつけていくために欠かせません。「まぁいいか」「この程度、十分だろう」というのは自己採点であって、正確な評価ではありません。学生の間は教授から、そして社会にでれば上司や顧客から、指摘される内容が正しい評価のです。報告する──つまり、結果を評価してもらうことで、「甘え」を克服できれば、みなさんは大きく成長できるでしょう。これも『未来を想うチカラ』の一つなのです。次回は、運とツキの違いについて、お話します。
自らの中に『ツキ』を育てよう。
訪れた『運』を逃さないために。


まず『運』というのは、言い換えればチャンスです。開運という言葉があります。運は開くことができる。自分の身の上が未来でどうなっているか、幸運にも、不運にも自らの努力で変えていくことが可能なのです。これが『運』。
そして、この『運』を良い方に作っていく技術が『ツキ』であると私は考えています。「取りつく場所」「手がかり」「良いめぐり合わせ」などと解釈されていますが、『運』であるチャンスを呼び込むための準備、日頃の努力こそが『ツキ』なのです。先の宝くじを例にとれば、買うという行動がなければ、決してくじに当たるというチャンスにはめぐり合えないのです。さらに、当たりかどうかを確認する作業も『ツキ』であり、『運』を確実に手にするために欠かせないものなのです。
エンジニアとして常に技術を磨いておく。最新の情報を収集し、これを整理整頓しておく。連絡し決断する力を見につけ、報告することで、自らの実力をしり、問題の解決を行っておく。こうした『ツキ』の作業、日頃の努力によって、斬新なアイデアにいきついたり、みんなの役に立つ機械やシステムを生み出したりといった『運』が訪れ、そのチャンスをしっかりと手にすることができるのです。『未来を想うチカラ』とは、『運』を呼び込むための『ツキ』を作る作業であり、またいつかきっと訪れるチャンスを確実に手にするための準備なのです。未来に『運』を育て、逃がさないために、『ツキ』を自らの中に蓄えてください。
できると本気で信じれば、
金属のスプーンも曲がります。



結果はもちろん、曲がりました。くねくねと、くるくると。みなさん一人ひとりの未来にも、当てはまると思いませんか?「自分はダメなヤツだ」と悔やめば、そういう人生が待っているし、「自分はきっと人の役に立つ仕事ができるはずだ」と確信していれば、何かしら業績を残す人になるということです。やって、できないはずはない!とみなさん自身のことを強く信じてあげてください。
できると信じて頑張る!みなさんの姿を、
周囲の誰もが応援したくなるのです。


ところで、とくしまマラソンのライブ中継をやってみようと思ったきっかけは、2008年春に開催された第1回大会に私自身が参加し、そして完走したことでした。『第1回大会参加で生まれたアイデア』友人に誘われ、軽い気持ちで参加したものの10kmを超えたあたりで膝が笑いはじめ、15kmでは、いつへたり込んでも不思議ではないほど心身ともに疲れ切っていました。そんなときです。沿道に集まったみなさんから、「がんばれぇ〜!」「まだ、いけるぞ」という声援がはっきりと聞こえたのは…。限界に近づき、それでもやれるところまで行こうと頑張っていた自分は、いわゆる『孤独』でした。日頃から走り込んでいるわけでもなかった私が、ここまで走れたのは、自らを信じるチカラだったと思いますが、その先のエネルギーをくれたのは、沿道からの声援だったのです。
ランナーそして沿道で応援するみなさんとの間に満ちた不思議なエネルギー、感動をどうにか伝えたい──。振り返れば、これが当社が取り組んでいる『無線LAN移動中継システム』がさらに前進する原動力になったのです。未来のエンジニアのみなさん、まずは、自分を信じて、できると強く思って頑張ってください。そんな姿、情熱を、周囲はきっと応援してくれるはずですから。
人と出会い、交流することで、
情熱とアイデアが生まれます。




無いモノは創ればいい。

私は徳島県徳島市で、金型設計制作、機械設計制作、FA(ファクトリー・オートメーション)システム開発、放送支援システム開発などを手がける株式会社松浦機械製作所のトップ兼エンジニアの松浦良彦(まつうら・よしひこ)です。
いきなりですが、カタチのあるものなら、私はどんなモノでも造ることができると信じています。
それは非常に希(まれ)で特殊な技術や工作機械を持っているからではなく、顧客の要求はそれぞれ個性的で大変複雑で、しかも切実であることを知っているからです。
機械は私たち人間の役に立つために生まれてきます。
いわば私たちの暮らしを支えてくれるかけがえのない友だち、それが機械です。このサイトを通じて「今何が求められているのか」「どんな機械があれば、あの人が楽になり、喜んでくれるだろうか」といった機械づくり、モノづくりへの視点を伝えたいと考えています。
私の頭の中にさまざまな思考が混沌と渦巻いています。それらを一つひとつ紐解き整理するためにも、私の中にある考えをつづりたいと思います。願わくば、当社の若い社員はもちろん、多くの皆さんに読んでもらいたい。そこで機械に関心を持っていただき、機械の本当の役割は何かを考えるきっかけにつながれば幸いです。
無いモノは創ればいい──そんな風に考えられるようになれば、きっと機械が身近な友だちに思えてくるはずです。